ある人が亡くなったとき、その遺産(相続財産)を取得した人にかかる税金です。遺産を相続した法定相続人だけでなく、遺贈、死因贈与によって遺産を取得した人(受遺者)も含まれます。
相続人の当面の関心事は、「財産がいくらあるのか」に加え、「相続税を払う必要があるのか」ということになるようです。相続税対策をするうえでも、おおよそ、どの程度の相続税の負担を要するかを知ることは重要なことです。相続税の概算は、具体的な遺産分割ができているか否かにかかわらずできます。しかし、現在、死亡しているわけではなく、あくまで将来の相続税を予測するのですから、不確定なことばかりです。現在ある財産を維持できるか、増えることもあり得ますし、逆になくなることもあります。資産の評価の仕方も、また、控除額などについても違ってくる可能性があります。
相続税を納めなければならない目安は、相続財産が相続税の課税最低限、つまり、基礎控除額を超えるかどうかです。相続財産が基礎控除額より少なければ、税金はかからないのです(相続問題が発生した中で、実際に相続税を納めなければならない人は、全体の約4%程度です)。
財産を取得した人の多くは、宅地、畑などを含めた土地です。いつの時代も、土地が遺産分割にあたってのトラブルの元凶とされていますが、地価が下がった今でも、その傾向に変わりはないようです。
基礎控除額=5,000万円+1,000万円×法定相続人の数 | ||
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①定額控除 | 5,000万円 | |
②法定相続人比例控除 | 1,000万円×法定相続人の数 |
法定相続人の数 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人 |
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基礎控除額 (非課税の限度額) |
6,000万円 | 7,000万円 | 8,000万円 | 9,000万円 | 1億円 |
例えば、妻と子供3人の計4人が相続人の場合、相続財産が9,000万円までなら相続税の申告義務はないということになります。
定額控除 | 5,000万円 |
法定相続人比例控除 4人×1,000万円= | 4,000万円 |
合計 | 9,000万円 |
相続人が相続放棄をした場合、あるいは被相続人に養子がいる場合等の基礎控除の算出には、次の点に十分注意してください。
平成27年1月1日以後、相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税については、下記のとおりです。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数 | ||
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①定額控除 | 3,000万円 | |
②法定相続人比例控除 | 600万円×法定相続人の数 |
法定相続人の数 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人 |
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基礎控除額 (非課税の限度額) |
3,600万円 | 4,200万円 | 4,800万円 | 5,400万円 | 6,000万円 |
例えば、妻と子供3人の計4人が相続人の場合、相続財産が5,400万円までなら相続税の申告義務はないということになります。
定額控除 | 3,000万円 |
法定相続人比例控除 4人×600万円= | 2,400万円 |
合計 | 5,400万円 |
基礎控除額を算出する際の法定相続人の数は、相続を放棄した人がいても、放棄がないものとして計算します。
被相続人の養子のうちの1人を法定相続人の数に含めることができます。
被相続人の養子のうちの2人を法定相続人の数に含めることができます。
上記の場合において、税の負担を不当に減少させる目的の養子と認められる場合は、法定相続人の数から除外されます。
相続税の申告期間は、相続登記などと違って期限が決められています。遺産分割協議が成立しない場合でも、相続税の申告期限までに、未分割による相続税の申告書を提出して納税します。この場合の各人の課税価格および相続税額は、仮に民法の法定相続分に従って分割したものとして税額を算出して納税します。その後に、遺産分割協議が確定したら、改めて「修正申告書」または「更正の請求」を税務署に提出します。相続税の申告書の提出期限は、次のとおりです。
申告書の提出期限 |
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相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内 |
例:10月1日に相続開始の場合、翌年の8月1日が期限になります。
相続税の申告書の提出先は、相続人の住所地の所轄税務署ではなく、被相続人の住所地の所轄税務署です。なお、各相続人が別々に行うのではなく、全相続人の連名による一つの申告書で一括して申告することとされています。相続税の納付も、原則として申告書の提出期限までに行いますが、延納の制度もあります。
被相続人が事業を営んでいたようなときは…
相続が発生した場合、その年の初めから相続開始の日までの被相続人の所得について、相続開始の翌日から4ヶ月以内に確定申告と同じような申告(これを準確定申告といいます)をして、所得税を納付する必要がありますので、相続人の方は注意をしてください。
相続税のかかる財産には、本来の相続財産とみなし相続財産の2つがあります(贈与税のかかる贈与財産も同じ考え方です)。
被相続人が亡くなったとき、所有していた土地、建物、事業(農業)用財産、有価証券、現金、預貯金、家庭用財産などの一切の財産は、相続税がかかります。相続税のかかる財産には、次のようなものがあります。この種類、区分ごとに一定の方法で相続財産評価も行われます。
種類 | 細目 | 財産の例示、利用区分等 | |
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土地(土地の上に存する権利を含みます。) | 田畑 | 自用地、貸付地、借地権(耕作権)、永小作権 | |
宅地 | 自用地(事業用、居住用、その他) 貸付地、貸家建付地 借地権(事業用、居住用、その他) |
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山林 | 普通山林、保安林(又はこれらに対する地上権、賃借権) | ||
その他の土地 | 原野、牧場、池沼、鉱泉地、雑種地(又はこれらに対する地上権、賃借権、温泉権又は引湯権) | ||
建物 | 家屋、構築物 | 自用家屋、貸家、駐車場、養魚池、広告塔 | |
事業(農業)用財産 | 機械、器具、農機具、その他の減価償却資産 | 機械器具、農機具、自動車、船舶など | |
牛馬等 (農耕用、乳牛など) | |||
果樹 (かんきつ、なし、ぶどう、もも、かき、びわ、くり、うめ、茶) | |||
営業権 | |||
商品、製品、半製品、原材料、農産物等 | 商品、製品、半製品、原材料、農産物等の別にそれらの明細を記載する | ||
売掛金 | |||
その他の財産 | 電話加入権 | ||
受取手形その他 | |||
有価証券 | 特定同族会社の株式および出資 | 配当還元方式によるもの | |
その他の方式によるもの | |||
上記以外の株式および出資 | 上場株式、気配相場のある株式 | ||
公債および社債 | 国債、地方債、社債、外国公債 | ||
受益証券 | 証券投資信託、貸付信託の受益証券 | ||
現金、預貯金等 | 現金 | 金銭、小切手 | |
預金、貯金、その他 | 普通預金、当座預金、定期預金、通常郵便貯金、定額郵便貯金、定期積金、金銭信託など | ||
家庭用財産 | 生活用具 | 家具、什器 | |
その他の財産 | 立木 | 杉、ひのき、松、くぬぎ、雑木等 | |
装身具 | 貴金属、宝石 | ||
趣味用品 | 競走馬、ゴルフ会員権、ヨット、書画、骨とう、スポーツ用品 | ||
交通手段 | 事業用でない自動車等 | ||
その他 | 特許権、著作権 | ||
電話加入権 | |||
貸付金、未収配当金、未収家賃 |
相続財産と同じような性質を持っているもので、民法上の相続財産ではありませんが、相続法上は相続財産として、相続税がかかります。被相続人の死亡によって支払われる各種の保険金や死亡退職金などは、相続財産とみなされて、その受取人に相続税がかかります。このようなみなし相続財産には、次のようなものがあります。
死亡保険金 | 生命保険金、損害保険金などのうち、被相続人の掛金(負担分)に対応する額 |
死亡退職金 | 死亡退職金、功労金、退職給付金など |
生命保険契約に関する権利 | 被相続人以外の人が契約者で、保険料は被相続人が負担していた生命保険契約で、被相続人の死亡では保険金の貰えないもの (解約払戻金相当額) 注)保険料負担も契約者も被相続人の場合は、本来の相続財産です。 |
定期金に関する権利 | 郵便年金契約などで、被相続人が掛金を負担し、別人が契約者の場合。(被相続人の死亡では貰えないもの) |
保証期間付定期金に関する権利 | 被相続人が掛金を負担していた郵便年金契約などで、被相続人の死亡後、遺族が受け取る―時金や定期金など |
被相続人の遺言で受けた利益 | ①信託の利益を受ける権利 ②著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合の利益 ③債務の免除、引き受け、弁済を受けた場合の利益 ④上記①から③まで以外の経済的利益 |
また、被相続人から相続や遺贈によって財産を取得した人が、相続開始前3年以内にその被相続人から贈与を受けた財産があるときは、相続財産に加算されて相続税がかかります。あくまでも相続財産を取得した者のみが対象となり、孫など法定相続人以外の者には適用されません。加算されるのは贈与を受けたときの価額です。この結果、同じ財産について贈与税と相続税の二重課税の問題が生じますが、贈与を受けたときに、すでに贈与税を納めていたら、その分は相続税から差引くことができます。これを贈与税額控除といいます。
3年以内の贈与であっても、贈与税の配偶者控除(婚姻期間20年以上の夫婦間の贈与で、居住用の不動産を贈与する場合、2,000万円までの額は控除されます)を受けている金額に対しては、課税されません。
相続税のかからない財産とは、公益事業を保護するために、あるいは財産の性質などから、課税すべきではないと考えられる財産で、次のようなものがあげられます。
墓地、墓石、祭具など | 神棚、仏壇、仏具など。ただし、骨とう品は課税されます。 |
公共事業用財産 | 宗教、慈善、学術などの公益に供するもの。 |
生命保険金 | 500万円×法定相続人数分はかかりません。 |
死亡退職金 | 500万円×法定相続人数分はかかりません。 |
寄付金 | 相続税の申告期限内に公益法人などに寄付したもの。 |
美術品として購入した仏像などは、相続税がかかります。また、墓地を購入するために生じた借入金は、債務控除の対象になりませんので注意してください。
当行政書士事務所は、本ホームページによる情報提供のほかは、税務に関する書類作成及び相談業務は一切行っておりません。